爛漫の春の宵こそ逍遥を
3月27日の事
桜は咲いているかとツッカケひっかけて桜の木に向き合い
まだ咲いてはいないが
もう直ぐ開くつぼみのなんて可愛らしいことか。
3月28日の事
一輪咲けば、次から次へと咲き
満開になる日のことを思い
ウキウキとするのです。
3月29日の事
カメラを抱えて、家の周りをうろうろしていると
隣のバアちゃんが「今年も咲き始めただなぁ」
と、曲がった腰を伸ばして見上げていました。
この桜の下でバアちゃんとうちの長女が写真を撮ったのは
もう35年も前になります。
あの頃のこの桜はまだまだ若々しく
幹もまだ細かったと記憶しています。
それは3月30日の事
小雨になり、桜の様子を見に行くと
雫をピアスのようにキラキラさせて
沢山の花が咲いておりました。
3月31日のこと
お昼前のひと時
桜の樹の下に立って青空を見上げると
その青空の柔らかな優しさを
春の陽光も呼応するような優しさを
この身で受け止めることが出来る幸せを幸運とさえ感じるのです。
4月2日のこと
この日はワタクシ共夫婦の38回目の結婚記念日で
42年前の4月に出会ってから今日までの長い年月を
「長いなぁ」の一言で総括いたしました。
結婚式の朝
近所に住んでいた母方の叔父が
自分の家に咲いていた桜を一枝手折って
車に乗り込むワタシに渡してくれました。
あの叔父はそれから3年もしないうちに逝ってしまいましたっけ。
4月4日のこと
階段を上り2階の物干し場へと出るドアの
アクリル板の窓から見る、ほぼ満開の桜。
タッタッタと足取り軽く駆け上った頃を思います。
今でも足取りは軽いとは思っていますが
タッタッタではなくオットットとなっているのが哀しいかも。
ま、致し方のないことだわねと達観した17歳・・・
4月5日のこと
今日が満開だね
と、夫と語り合いました。
夫は桜の樹が老いてきているのを悲しんでいます。
二代目の桜を傍らに植えようかとも思いますが
この満開の様子をボクたちは見られるのだろうか
と、夫は花を見上げながら申します。
大丈夫よ。
あなたのお父さんもお母さんも長命だったでしょ。
花芯から紅になってきています。
桜の花自身が﨟長けてきているのでしょう。
この美しさのホンの一瞬の事。
直ぐに桜吹雪となってしまいます。
それまでの間、桜を愛でて暮らします。
爛漫の春の宵こそ逍遥を