Y版山姥日記

旧山姥日記

東奔西走の日々

 
 
この歌の入っているLPレコードは
ワタシたち夫婦の新婚生活のBGMだった。
とても懐かしくこの歌を思い出したのは久しぶりに
亡き父母の最晩年を過ごした家を見に行ったときのこと。
 
我が家と同じ頃に父が好きに設計した家で
長年連れ添った病弱の妻の使い勝手を最重要に設計したらしい。
この家で、半身不随になった父は
妻のためにおさんどんをし、庭いじりを楽しみ
寝付くこのが多かった母は
苦労した分、時間を好きに使っていた。
 
母が花咲蟹を岩絵の具で描いていると
父は「バアサン、飯出来たぞ」と声を掛ける。
母は筆を置き「美味しいねぇ」と言いながら食べる。
あの日のことが懐かしい。
その絵が出来上った頃
父は食べるのを楽しみにしていたのだが
その蟹は完全に腐敗していたそうだ。
笑いながら話す父母も懐かしい。
 
 
久しぶりにこの家を見たとき
変わっていないことに驚いた。
父母の生前と同じに緑が茂っていた。
手入れも行き届いていて
現在の住人は、ワタシたちに家の中を見せてくれた。
同行した座敷童女2号もワタシと同じ様に目頭を押さえている。
 
父の愛した木々も
母の愛した明るい縁先も
そのままだった。
 
 
7月の半ばからこの日までの
東へ行ったり西へ行ったりで目まぐるしいほどだった。
こんな事はこれからそうそうはないだろが
とても疲れてしまったけれど
親の最大の仕事だから致し方がない。
 
ワタシの両親も太っ腹の両親も
あの世できっと笑っているだろう。
 
末息子と末娘のワタシたち夫婦が
自分たちの子どものために東奔西走の日々を送っているなんて
笑えて仕方がないことだろうよ・・・
などと
ようやく真っ青になった空を見上げて思った。
 
 
 
 
 
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