Y版山姥日記

旧山姥日記

8月の読書記録

なんだか不思議な夏でありました。


読んだ本の数:11冊
読んだページ数:2983ページ
 

http://ecx.images-amazon.com/images/I/51mmg%2BFdPFL._SX100_.jpg猫町感想
この金井田英津子の装丁もカバーの絵もステキ!で、萩原朔太郎は詩人だと思い込んでいたからこういう作品があるとは思わなかった。しんと静かな真夏の昼下がりの農道で、誰一人居らず虫も鳴かず獣も居ず、犬も猫もなりを潜めているころ。アスファルトの道を太陽が容赦なく照らしているのに、何故かフイっと外に出たときの世界の不可思議さ。そんな情景を思い出す。気がつくと田舎のベンツと呼ばれる軽トラックが超徐行で走ってくる。そうしたとき、慌てて家の中に逃げ込むときの気持ちが読後感だった。
読了日:8月30日 著者:萩原朔太郎,金井田英津子




http://ecx.images-amazon.com/images/I/51C%2BTAY6Q5L._SX100_.jpg異邦人(いりびと)感想
残念なのは終章。でも、おもしろかったしゾクゾクしながら読み進んだ。アートに携わる人は、その職業によって考え方も生き方も違う。けれど魅入られた人と創り出す人の心は方向が同じような気がしてならない。表紙の絵は終章を象徴している。けれど、人としていいのか。どうもフツーのおばさんにはよく分からない。ただ、すべての出来事が昔からこの表紙の絵に突き進んでいったことは分かるような気がする。と、いうことは終章は残念でも何でもなく、なるべくしてなったということか。血脈の強さだね。
読了日:8月28日 著者:原田マハ




http://ecx.images-amazon.com/images/I/51DSGDWN5ZL._SX100_.jpg倒錯のロンド (講談社文庫)感想
途中まで読み「麦の海に沈む果実」を読んでしまった。なんだかよく分からない。倒錯しすぎていて理解不能の結末。お母さんを殺人者にするのはいかがなものか・・・と、思う。
読了日:8月25日 著者:折原一







http://ecx.images-amazon.com/images/I/51209EYQ1JL._SX100_.jpg麦の海に沈む果実 (メフィスト・クラブ)感想
「三月は深き紅の淵を」だ。それがどういうものなのか、分かった気にさせる。少年少女という生き物は厄介だ。その厄介さ加減、自分もそうであったことを思い出す。 「麦の海に沈む果実」この詩がね、あんまりいただけないと思っちゃったのであります。ドキドキしながら夜中まで読んでおりました。
読了日:8月25日 著者:恩田陸





http://ecx.images-amazon.com/images/I/51rHh7zNAhL._SX100_.jpgビブリア古書堂の事件手帖 (6) ~栞子さんと巡るさだめ~ (メディアワークス文庫)感想
図書館に行き、児童書の階へあがって行って其処にあったので借りてきた。読むつもりはなかったけど(ドラマ見ていやになったから)。なんか、世界が狭いと感じたのはワタシだけか?みんな何らかの血の繋がりがあってね。とはいえ、今回も面白かった。太宰の全集を探し出して(2階の開けずの間から)読み直さなきゃ始まんないなぁ。高校生の時に親に誕生日祝いで買ってもらった全集なんだけど、何年も見てないなぁ・・・。
読了日:8月16日 著者:三上延





http://ecx.images-amazon.com/images/I/41%2BZlGFhJlL._SX100_.jpgつきのふね (角川文庫)感想
ワタシが中学生だったのは50年も前のことだけど、思い出を手繰ってみるとたくさんの友人の顔がワタシにも笑ってくれるような気がした。良い思い出だけではない。高校受験は大変だった。本人はいたって呑気だったけど、両親は勉強嫌いな娘をどんな思いで見守っていたのだろう。石田衣良の14歳とは随分違うけれど「尾崎」の15歳とも違うけれど、中学生は何事も一生懸命なんだなぁと思う。「つきのふね」は銀色なんだねやっぱり。銀色と言う言葉や色の持つ不思議は月そのものの不思議と同じかもしれない。中学生かぁ・・・。懐かしいなぁ。
読了日:8月14日 著者:森絵都




http://ecx.images-amazon.com/images/I/51kYdUvUR7L._SX100_.jpgモダン感想
「中断された展覧会の記憶」は心が痛い。震災の後、どこかの美術館で展覧会を開いたというニュースが記憶の底にある。生き延びることに必死になった経験はないけれど、生き延びたと安心した直後に美術館に行けたとしたらワタシはきっと心からの安堵を感じるかもしれない。「楽園のカンヴァス」をのめり込む様に読んだ後なので、すこし気が抜けたソーダのような気がした。もう少し、何冊か何かの本を読んだ後に読めばよかったかしら。
読了日:8月14日 著者:原田マハ




http://ecx.images-amazon.com/images/I/51i6E1C8NbL._SX100_.jpg楽園のカンヴァス (新潮文庫)感想
昼過ぎに図書館を出て、たった今読了。夫は夕方から出かけていていない。芸術家って自分が一番を貫く人種だと実感している。長命した作家が勝ちだとも思うけど、夭逝の人はもっと勝ち組。後の世の人がベールを纏わせていく。けれども、その作品の力は永遠で・・・と書いていて虚しい。最後で声をあげて泣いた。純愛が過ぎる。原田マハさんはそういう作家だったと気がつくのが遅い自分に腹がたつが、まんまと著者の掌中に乗ってしまった。が、その乗りご心地は至極よい。芸術の魔力は作り手だけではなく、魅せられた人も逆らうことはできないんだね。
読了日:8月10日 著者:原田マハ




http://ecx.images-amazon.com/images/I/51UPb2IGn-L._SX100_.jpg私の恋人感想
いやぁ・・・。難しいご本でありました、久しぶりに。若い方の難しい文章にオバサンついていくのに必死でありました。最初は潰えるのかなと思いながらも我慢の子でしたが、徐々に面白くなりましたです。(何で今回の感想文はですます調なのか分りません)難しいけれど、難しさに酔い痴れて描いてる様にも思えましたです。が、面白くなかったわけではありません。若いっていいなぁという感想でありますです。平易な言葉と文章で難しいことを書くって大変なのかなぁ・・・。
読了日:8月9日 著者:上田岳弘




http://ecx.images-amazon.com/images/I/51GXOvBqm2L._SX100_.jpgあやし うらめし あな かなし (集英社文庫)感想
確かに「あなかなし」だ。哀しいお話ばかりだもの。「遠別離」が好き。こういう短編集で好き嫌いはあまり書かないけれど・・・。前に読んだ「神坐います山の物語」のほうが続編らしいけど、どちらが先でも構わない。浅田次郎さんの本はずっと長いこと読まずにいた。申し訳ないことに風貌が・・・。ところが「蒼穹の昴」を大人買いして読み終えてから、我が家は次郎さんファンになった。奇しくも同世代人で、時代背景の理解できるものも多い。すとんと腑に落ちる物語が多いことも嬉しく、心が満たされる気がする。
読了日:8月5日 著者:浅田次郎




http://ecx.images-amazon.com/images/I/61NZeAldWjL._SX100_.jpgオツベルと象/虔十公園林 (ますむらひろし版宮沢賢治童話集)感想
何度読んでも泣きたくなってしまうのが「虔十公園林」。先日、三島で見てきた「ますむらひろし宮沢賢治」展(だったかしら)で購入。マンガなので全集で読んだときや絵本で読んだときとは印象が全く違うが、やっぱり心の奥のほうで何かがざわめく。ヒトは信じられるのだと。
読了日:8月3日 著者:ますむらひろし,宮沢賢治

読書メーター






「虔十公園林」と「猫町」は短くて、あっという間に読めてしまうけれど
心に残るという点では、他のご本より重いものがあるような気がします。

ただこれは個人的な思いなので、誰でもがそうではありますまい。


この、金井田英津子さんの版画のご本は、ほかに
内田百閒「冥途」と夏目漱石「夢十話」を持っていますが
まだゆっくりと眺めることが出来ないでいます。
こんな美しい本が絶版だなんて・・・哀しい・・・。