Y版山姥日記

旧山姥日記

やさしさは空を見上げて・19日の富士山

12月19日

午後2時37分頃
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         お町から帰る道はずっと工事中で片側通行が続く

         止められている間に夕空を見上げた


        
         ついこの間まで

         山の樹々は葉を身につけていたけれど

         落葉樹は葉をみんなふるい落としている


         その樹々の枝を通して優しい色の夕空が見えていた



         車の外は工事車両と止められた車と

         やっと通れた対向車達が排気ガスをまき散らしている

         だけど

         夕空を見上げているその瞬間は喧噪も憂いも遠ざかり

         遠い日

         育った家の前の路地で幼友達とカラスの群れを見たことを思い出した



         不思議だね

         子どもの頃の思い出はいつも心が温かくなる

         かあさんの白い割烹着のお日さまの匂いや

         火鉢の上に掛けられた煮豆の匂いや近所の夕飯の匂い

 
         日が暮れてしまって

         叱られることは間違いないのにまだ遊んでいたかったことや

         八幡さまの境内の土の色や落ち葉の匂い

         その八幡さまから家に帰る途中の大きな家の門のこと

         八幡さまの隣のお寺にあった焔魔堂を覘いたこと

         近所にあったおソースやさんの匂いや

         空き地にたくさん咲いていたアカマンマの花のこと

         二階の物干し台から眺めた師走の空の色

         一瞬にして子どもの頃のたくさんの思い出がよみがえる




          切ないね