墨の香
硯を洗った
この香りはなんだろう
とても懐かしい香りだ
この香りはなんだろう
とても懐かしい香りだ
筆を洗っていると
幻を見ているように
香りが思い出を探り出していく
幻を見ているように
香りが思い出を探り出していく
毎年のお正月に母が着ていた着物の香りだ
青墨の香りか
亡くなった母の着物には香りがあって
毎年の正月にその香りが家を満たしていた
母はお正月用の着物は年に3日しか着なかった
正月の三が日だけ着る着物と真新しい割烹着の
その香りを今頃になって思い出した
毎年の正月にその香りが家を満たしていた
母はお正月用の着物は年に3日しか着なかった
正月の三が日だけ着る着物と真新しい割烹着の
その香りを今頃になって思い出した
私の使っている青墨の香りは本当はまったく違う香りなのに
不思議なこともあるものだ
不思議なこともあるものだ
亡くなる2年前の今頃
伊豆の達磨山の方を指さして母は言った
山が微笑んでいるんだよと
伊豆の達磨山の方を指さして母は言った
山が微笑んでいるんだよと
そうか・・・
今朝、向かい側の山を見て山が微笑み始めたなと思い
母の指さした姿を思い出したのだった
今朝、向かい側の山を見て山が微笑み始めたなと思い
母の指さした姿を思い出したのだった
あの年の5月
母は倒れて、その後二度と会話は成り立たなかった
母は倒れて、その後二度と会話は成り立たなかった
能筆だった母の手を思い出す
くせ字だねとワタシの字を見て笑っていた
その笑う声も思い出した
くせ字だねとワタシの字を見て笑っていた
その笑う声も思い出した
母は笑っているばかりの思い出