Y版山姥日記

旧山姥日記

霜くすべ~言葉は不思議なものと存じ候

仲良くしていただいている 舟さまのところで「霜くすべ」という言葉と巡り会いました。
美しい言葉だと思いました。

舟さまは俳句の中で使っておられました。
季語と思われます。

で・・・  イメージ 1     
                            この季語辞典は 昨秋 太っ腹が実家から持ち帰ったものです。
                            亡き舅の愛蔵していたものと思われます。


「霜くすべ」を引いてみました。
霜くすべ 〔春〕燻煙
             星がかがやき、風の静かな夜に、
             遠く畑に人影が動くのをみかけたと思うと畑のあちこちから煙がたちのぼり・・・
から始まる単行本2段組のたった23行の説明がありました。

この季語辞典は昭和43年5月30日初版発行で
舅の本は昭和49年6月10日発行の第8版です。

「合本俳句歳時記」や「ホトトギス俳句季題便覧」でも調べてみました。
三つの季語の本を読んでみたことになります。(「霜くすべ」だけですが・・・)

その三つのこの言葉の説明はほとんど変わりがないのです。 当たり前だけど。
でも、舅が何故この「季語辞典」を愛用していたかが分かるような気がしました。

東京堂出版のこの季語辞典の説明は 分かりやすく、
なんだか小説の一ページを読むような錯覚を起こし
言葉のイメージが映像となって頭に入ってくる・・・
そんな感じなのです。

厳しい感じのする明治の男を体現していた舅でしたが
戦後生まれの末息子の嫁など 奇異な生物ぐらいに感じていたと思います。
その舅が 思いの外ロマンチストであったのではないかと、今日 思いました。

舅が俳句を作っているとき その傍にはいつもこの季語辞典があったに違いないと思いました。
舅の机の上には その季節になると洋梨が一つ 熟れるのを待っていました。
南方の戦線で逝ってしまった戦友たちを思い出していたことは
舅が亡くなって 随分経ってから知りました。


たった一つの言葉から たくさんのことを思い出し
太っ腹とも舅の人と為りを話すきっかけになりました。

言葉とは不思議なものだなと 思った次第であります。

                           霜くすべ(霜燻べ)
                           春4月、遅霜で新芽が痛むのを防ぐために
                           籾殻などを焚きくすべて冷えないようにすることらしいです。