Y版山姥日記

旧山姥日記

6月の読書記録


読んだ本の数:11冊
読んだページ数:4071ページ
 

http://ecx.images-amazon.com/images/I/51pp5d9WVOL._SX100_.jpg春の庭感想
面白かった。けど、心に残らない。なぜに最後に姉の視点になるのかわからん・・・。太宰治があんなに欲しがった「芥川賞」なのにね。姉の視点になるまでは「春の庭」そのものに興味があって、写真集が実在するなら見てみたいとも思ったけれど。要は、お子ちゃまなんだよね、きっと。しかしだ。審査員の問題だよね。いくら登竜門とはいえ、読者は期待するんだからさ。まさか、某美術工芸の公募展みたいなことないよねと。なんとか、一生懸命にアラーキーと愛妻に結び付けて読もうとしたのに、読了後、虚しさだけが残ったようなそうでないような。
読了日:6月27日 著者:柴崎友香



http://ecx.images-amazon.com/images/I/41hKvKy8LoL._SX100_.jpgパノララ感想
不思議な人物群像のようにも思えるけれど、遅まきながらの成長譚だな、こりゃ。 一日が二回あるとか、テレポーテーションできるとか、人の感情や表情がわかるとかの設定もあるけど・・・。一人のオンナがヒトとして成長する様子は読んでいてイラつきながらも面白かった。我が家から20分ほどの酪農地帯には自分の家を20年以上作り続け、未だ完成に至らない家族がいるけどフツーの人だし、その近所の人はどでかいログハウスをあっという間に作っちゃったし、将春さんのような人はケッコウ見当たるので驚きも薄い。現実は小説よりも奇なりだね。
読了日:6月24日 著者:柴崎友香



http://ecx.images-amazon.com/images/I/51rvxDNKANL._SX100_.jpg冥の水底感想
異形のヒトたちの哀しさ。差別する側の欲望。ただ一人の人を愛し続けることへの驚きもある。美しくて哀しくて静かな話だった。ニ段組の分厚さにたじろいだけれど、あっという間にこの世界に入り込み、気づいたときは読み終わっていた。読後感も真によろしい・・・
読了日:6月21日 著者:朱川湊人




http://ecx.images-amazon.com/images/I/51txhU9%2BLML._SX100_.jpg新月譚感想
う~~ん・・・。先がどうなっているのか、ワクワクしながらページをめくったことは事実。けれど、読後感が前述の「う~~ん・・・」だ。面白い。だけど、なんだかなぁと思ってしまう。若くて美しい芸術家や文筆家はたくさんいるし、彼女たちの才能は本物だろうけど美貌が邪魔するする人も多いのはわかる。が・・・。よくわからん。面白いことはとても面白いんだけどなぁ。
読了日:6月20日 著者:貫井徳郎



http://ecx.images-amazon.com/images/I/51YTiNtgkuL._SX100_.jpg金色の獣、彼方に向かう感想
ホラー。読み終わって、そう思った。が、どれも哀しい。「夜市」以降、何冊か恒川さんの作品を読んだけれど、「夜市」と共通する哀しさだった。我が家から富士山が見える。そうして富士山の裾には樹海がある。樹海の木々を写した写真を見ていると美しさに飲み込まれてしまいそうだ。静謐という言葉が樹海には似合いそう。その樹海は本当に異界に通じているのだろうか。知りたいような知りたくないような・・・
読了日:6月18日 著者:恒川光太郎



http://ecx.images-amazon.com/images/I/51m8lN2fuSL._SX100_.jpg恋しぐれ感想
夫と葉室さんは同じ年の生まれだが学年は違う。が、同じ時間を生きてきた。ワタシもまた同世代。60年安保はまだ幼かった。70年安保や学生運動は高校生で出遅れている。そのワタシタチが還暦を過ぎ、落ち着いて読書できるようになった。同世代の作家の作品には共感できる文言が多い。面白いとか面白くないとかではなく、言葉の使い方に共感する。蕪村の辞世の句が好き。何を見たのだろうと、知りたい。ものすごく知りたい。ワタシみたいな稚拙な還暦過ぎのオバサンには想像さえつかない。全編通して蕪村の句はあまりに有名ではあるけれど・・・
読了日:6月11日 著者:葉室麟



http://ecx.images-amazon.com/images/I/51JUi83dGXL._SX100_.jpgふくわらい感想
シュールだなぁ・・・。が、読後直ぐに発したワタシの言葉。定さんの両親もシュールだけれど、愛されて育った人は幸せだ。肉子ちゃんも定さんも生きることに貪欲なんだなぁと、思う。どんなニンゲンも存在を肯定されているんだということがわかる。いろんなシュールな設定はあっても、全うな人間の物語だった。そこが嬉しい。
読了日:6月10日 著者:西加奈子



http://ecx.images-amazon.com/images/I/51wX22cSydL._SX100_.jpg桜の下で待っている感想
末っ子はこの作者であるまるさんの一つ上。しかも同窓生だ。四谷の学内で息子夫婦とまるさんはすれ違っているかと思うだけで心温まる。若い作家の温かい心がよく分かる。美しい物語ばかりだった。「モッコウバラ」「からたち」「菜の花」「ハクモクレン「桜」それぞれの花の物語はヒトの想いを優しく美しく見つめるきっかけを作ってくれた。年若い作家のこれからが楽しみ。
読了日:6月7日 著者:彩瀬まる



http://ecx.images-amazon.com/images/I/51bN652z-zL._SX100_.jpg天狗ノオト感想
これもまた一気読み。山里に暮らしているワタシにとってそうかもしれないなぁと思う部分は沢山あった。6月5日は母の祥月命日で、その日にこの本に出会ったことが、どこか不思議で母の笑う声を聞きたいと思った。「天狗ニアフ」このページに出会うことはおじいさんと保君の目に見えない紅い糸だったのかな。おばあさんは全部承知のようだし、天狗と呼ばれた異界の者たちが何かを守っていることは、この地に住んでいるとストンと腑に落ちる。おばあさんの言葉を読んでいると、ワタシも孫に対してこんなおばあさんになれるよう努力せねばと思った。
読了日:6月5日 著者:田中彩子



http://ecx.images-amazon.com/images/I/51w7lBWIerL._SX100_.jpg鹿の王 (下) ‐‐還って行く者‐‐感想
5日未明に読了。失ったものは帰ってはこない。帰ってはこないけれど、新たな存在を感じ、生きていくことにしたのだろうか。生きることは戦うこと。バルサとはまた違うサエの存在が、そして幼いユナの温もりが救いだ・・・。と、おもう・・・
読了日:6月5日 著者:上橋菜穂子




http://ecx.images-amazon.com/images/I/51bUlESIdSL._SX100_.jpg鹿の王 (上) ‐‐生き残った者‐‐感想
息もつかずに上下巻を読む。家事が停滞した。と、言っても孫と喧嘩するくらいだけど。侵略した側もされた側も苦しみ傷つくのは民と大地だ。「独角」の存在そのものが哀しい。生き残って未来に望みを託すことのできないヒトの心の中の慟哭を若い人たちが感じてくれればと思う。
読了日:6月3日 著者:上橋菜穂子






6月はよく読んだ。

こんなに読んだとは思えないくらいだ。


どれも面白かった。




乱読というのだろう、ワタシの読み方は。

そうして、
いろいろなことから逃避できる物語の世界があることはありがたい・・・
と、思っている。